はじめてのR
はしがき
Rは,統計解析やデータ分析のために開発された強力なプログラミング言語です。データサイエンスの発展とともに,Rの利用はますます広がり,研究者や実務家にとって欠かせないツールとなっています。しかし,Rを初めて学ぶ人にとって,その習得の入り口は意外と難しく感じられるかもしれません。特に,最近のインターネット上の記事や学習コンテンツでは,tidyverse というパッケージ群を前提とした解説が主流になりつつあります。
tidyverse は,Rを使いやすくするために設計されたモダンなライブラリ群であり,直感的なデータ操作が可能になります。そのため,多くの初心者向け教材では,最初に tidyverse を学ぶことが推奨されています。しかし,著者は,まず base R の基本をしっかりと理解してから tidyverse に進むことが,長期的な視点で見ても効率的な学習方法であると考えています。
base R は,Rの標準的な関数群を指し,tidyverse を含めたさまざまなRの拡張機能の基礎となるものです。base R の理解なしに tidyverse だけを学ぶと,Rの根本的な仕組みが分からず,応用が利かなくなることがあります。一方で,base R の基本を押さえておけば,tidyverse の利便性やその背景にある設計思想をより深く理解でき,結果的にRをより柔軟に使いこなせるようになります。
Rを学ぶ目的は,単に回帰分析を実行できるようになることや,誰かが作ったパッケージを利用できるようになることではありません。それらはあくまで手段の一つに過ぎず,本当に重要なのは Rを使いこなすこと です。base R を理解せずにパッケージに頼るだけでは,問題に直面したときに自分で解決する力が身につきません。データ分析の現場では,自分でコードを工夫し,必要に応じて関数を組み立て,新たな問題に適応できる力が求められます。そのためには,Rの基本的な仕組みや関数の動作原理を理解することが不可欠です。
本サイトでは,Rをこれから学ぶ人が base R を基礎から習得し,その後 tidyverse を効果的に活用できるようになること を目指します。初心者がつまずきやすいポイントを丁寧に解説し,実践的なサンプルコードを通じて,Rの基本的な考え方から応用までを体系的に学べるような構成になっています。
これからRを学び始める方にとって,本サイトが 確かな出発点 となることを願っています。